■京都に住んでいるから、東京にはたまにしか行けない。
短い日数で、限られた時間内でうろうろするため、行くところも自然と限られる。いきおい自分の趣味に沿ったところに足を向けてしまう。
それが良くないとか、そういうことではないが、ふりかえるとほとんど食事の店に集中しているところが情けない(笑)。
東京に行くと洋食系やとんかつのお店に行くことが多い。京都にはおいしい洋食店やとんかつ店、カレー店が少ないためだ(個人的には)。だから、いつのまにか東京は「洋食系のおいしい店が点在する街」というイメージになっている。
一時期、東京でカレー店を捜索(?)したことがあった。「キッチン南海」(早稲田大学前の店が一番おいしい)、神保町の「ボンディ」などはよく行ったが、同じ神保町で人気の「エチオピア」はちょっと合わなかった。新宿の「中村屋」の高級カレーもいただいたけれど(上の階の方)、個人的には「キッチン南海」がおいしかったのを覚えている。
洋食は主に日本橋の「たいめいけん」や銀座の「梅林」「煉瓦亭」でいただいた。
「たいめいけん」は、夕食どきのワイワイした雰囲気の中で名物のコールスローやボルシチで準備をしてからカツを食べるのが楽しかったし(今は味が……微妙。ラーメンはおいしい)、「梅林」ではスペシャルカツ丼や銀カツをゆっくりやっつけながらビールを飲むのが何ともいえなかった。真夏日に、とてつもなく味の濃い(そしてしつこい)スペシャルカツ丼をほおばる瞬間というのは他ではえがたいものだ。
ふだん、家では肉や魚をほとんど採らずに豆や野菜を大量に摂取しているためか(最近は塩分もかなり減らした)、旅行先では味の濃いものが食べたくなる。
その点、「たいめいけん」や「梅林」のキッチュな味がかえっておいしく感じるのかもしれない。
同じ洋食でも、「煉瓦亭」はちょっとニュアンスが違う。明治28年創業の店内に歴史考証のために伺う感覚があったり(笑)、あるいは池波正太郎の幻影(彼はここや天ぷらの“はやし”が好きだった)を求めて立ち寄る、という感がある。それでも、上カツレツはいかにも日本の洋食という仕上がりで、なかなかに好きだ。
とんかつ屋にもよく行った。個人的な感想だが、東京のとんかつは京都よりずっとおいしい。
一番好きなのは新橋の「燕楽」。塩で食べるここのヒレかつは、気さくでいながら相当おいしい。銀座の「かつぜん」よりも僕は「燕楽」の気楽さをとる。考え方によるが、とんかつは気軽な方がとんかつらしい、と感じるからだ。
その点、自由が丘の「丸栄」も捨てがたい(いろいろな意味で)。店内は雑多として、接客も適当であり、油も良くないが、いい意味でのジャンク感はいかにも日本の洋食(?)らしい。こういうお店が続いている街はすてきだなあ、と思ってしまう。
上野の老舗「蓬莱屋」「ぽん多」でいえば、個人的には「蓬莱屋」との相性がよかった。晩早めにお店に入って、静かに日本酒をやりながら揚げたてのかつをいただくのは幸せなひとときで、「あぁ、生きているっていいなあ…」としみじみ(?)したこともあった。
中華料理店にもよく行った。
新宿御苑の「シェフス」はお腹いっぱい食べられる。浜松町の「新亜飯店」で小籠包をつまみにビールを飲むというのも楽しかった。市ヶ谷の「中国飯店」も、晩は敷居が高いが、お昼なら安くておいしいものがいただける。
東京の中華の憧れは、なんといっても福臨門。ここには一度訪れたい。
しかし、値段もさることながらそれなりの器量が問われそうなお店なので、もう少し一生懸命働いてから(?)門をくぐろう、と独り勝手に決めている。だからまだ行けていない(なんだか武道みたいだ)。
このように東京の食事遍歴をふり返ると、フレンチやイタリアンにはさほど行っていないことに気づく。あまり時間がないためだが、東京にはおいしいお店がかなりあると感じる。
個人的には麻布十番の「レ・シュー」と白金の「ラビラント」が好きだが、「ラビラント」の好戦的(?)な雰囲気(好きな方は好きだと思う)より「レ・シュー」の沈澱した格式が好ましい。ここには日本人が抱いたフランス料理への憧れが一種の誇りとしてあるように感じる。
こういう「レ・シュー」のような日本的フレンチは、京都にはないのではないか。
そういえば、麻布十番や九段下にある「ル・プティ・トノー」は気軽ながらも濃厚かつ大陸的な味を提供してくれるらしい。いつか訪れたいものだ。
先日、mineさんがマンダリン・オリエンタルホテルの抹茶のお菓子と紅茶をお贈り下さった。お気に入りのお店で、折に触れて行かれるとのことだ。
お菓子は控えめな甘さが上品で、とてもおいしく、それに紅茶の香ばしさが添えられると何ともいえない幸せ感が漂う。
mineさま、とてもおいしゅうございました♪ ありがとうございますぅぅぅ
mineさまのプレゼントのお菓子をいただいてから、今度は東京のマンダリンホテルにも行ねば…と決意を抱いたのだが、やはり行きたいところは食事関係だったりする(笑)
それはさておき、遠い街のおいしいものには一種の憧れがある。そしてその街でも色々な方々が暮らしていることを想うと、京都と東京の間に横たわる距離感が不思議なものに感じられるのだった。
上の画像はマンダリン・オリエンタル・ホテルの紙袋。
■(BGM):The Beatles [Dear Prudence] (1968)