■その昔、
という句を読み、面白いと感じた。映画のワンシーンのように鮮明で、山口誓子を知ったのはこの句が初めてと思う。
たおやかな「夏草」と「車輪」という巨大な鉄塊の組み合わせは意表を突いているし、「来て止まる」と動詞をたたみかけて句を終わらせる点など、それまでの俳句にない躍動感を感じた。
その後、調べると同時代芸術に「汽罐車の車輪」が頻出することがわかり、目のつけ所は誓子の独創でないことが判明したが、かえってこの句の面白さがわかったものだ。
昭和8年、「大阪駅構内」と題した連作俳句(五句)の冒頭句。第2句集『黄旗』(昭和10)に収録されている。